ちょうちんまつり
唐　亜明 文 ・ 徐　楽楽 絵

　中国ではあまり知る人もないひとつの物語が、いつのころからか欧州に伝わり、
明治の初め日本にやってきたラフカディオ・ハーンが、息子の小泉一雄に語り伝
えたという 『ちょうちんまつり』。
　一つの物語が、東洋から西洋へ、そしてまた東洋に戻り、日本に伝えられる長
い道程。絵本の時空に響き合う、ふしぎな運命をもつ絵本だ。

　提灯（ちょうちん）祭りの日に山に登った男が、仙人たちの碁に見とれているうち
数百年が過ぎてしまい、途方に暮れてしまう。さまざまな冒険を経て男は月へ行き、
「過去の窓」からようやく家へ帰った、という話。
　中国の女性画家・徐　楽楽の品格の高い原画が、ゆったりと静かに、東洋の
不思議な世界に遊ばせてくれる。

　１９５３年、中国北京市に生まれる。「中国旅行新聞」編集
者を経て中国音楽家協会に勤務し、日本の歌の訳詞に従
事する。１９８３年来日。早稲田大学文学部卒業。現在、福
音館書店編集者のかたわら、作家としても活躍している。
　著書に『ビートルズを知らなかった紅衛兵』（岩波書店）な
どがある。